何も計算せず、期待も手放したとき、
何を感じるだろうか。
—あの瞬間から、いまへと還る—
本展『4/7 無意識』は、写真を通して「いまの気配」を見つめ直す試みです。
長年の広告や雑誌の撮影で形成された思考や計算、期待を手放し、本能と直感に委ねてシャッターを切ることで、「無意識」に近い状態での撮影を行っています。
本作では、日本の美意識である「侘寂、物の哀れ、幽玄、間」を手がかりに、不完全さや無常の中に立ち現れる美を探っています。
作者の意図にとらわれることなく、それぞれの「いま」の感覚とともに、自由に作品と向き合っていただければ幸いです。
展覧会に寄せて
『4/7 無意識』は、写真を通して「いまの気配」をあらためて見つめ直す試みです。
ここで問うているのは、私たちが計算や期待を手放したとき、そこにどのような「現在」が立ち現れるのか、ということです。
長年、私は雑誌や広告の撮影に携わってきました。
当時の私は、クライアントの要望、予算の制約、受け手の反応を常に意識しながら、あらかじめ設定された結果へ向けて瞬間を切り取っていました。しかし四年前、私は少し立ち止まり、そうした計算や期待を手放し、本能と経験だけを残して、より直感的にシャッターを切るようになりました。そのような状態のなかで、私はほとんど無意識に近いかたちで撮影し、まだ答えとして整理されていない瞬間を、あらためて感じ取るようになりました。
本作では、日本の美意識――侘寂、物の哀れ、幽玄、間――を手がかりに、不完全さや移ろい、静けさのなかに立ち現れる美を探っています。鑑賞者は、作者と同じ共感にたどり着く必要はありません。それぞれの経験や感覚を通して、自由に作品のなかへ入っていただければと思っています。
画面に意図的に残した余白は、単一のメッセージを伝えるためのものではなく、記憶や感情が静かに重なっていく「内省の空間」をひらくためのものです。
異なる感じ方もまた、作品と鑑賞者とのあいだに生まれる対話の一部だと考えています。
「4/7」という題名には、私自身の修行がいまだ途上にあり、なお円満には至っていないという感覚を込めています。
半ばまで来てはいるものの、まだ完成には届いていない。
私にとって大切なのは、到達することよりも、揺れながらも前へ進み続ける、その過程そのものです。
計算しなくなったとき、期待しなくなったとき、私たちは何を感じ取ることができるのでしょうか。
この展覧会が、鑑賞者にとって自らの「いま」にそっと触れる時間となるなら、それが私にとって何よりの応答です。
ティミー・イン (Timmy Ying )
香港出身、札幌市在住
札幌と香港を拠点に活動する写真作家。
29年にわたり映像・写真制作に従事し、現在は写真を主軸に制作を行う。
ファインアートとドキュメンタリーのあいだを往還しながら制作を続けている。
技巧や華やかな演出を前面に出すのではなく、作品が鑑賞者にとって「立ち止まる」契機となり、慣れた視点から一歩離れて、自分自身に立ち返る瞬間を生み出すことを大切にしている。
画面に余白を残すことで、鑑賞者それぞれの記憶や感情が静かに重なる場をひらく。
そうした内省的なまなざしを、「自我静観」として探っている。
略歴
1997 平面デザイン1年・写真1年課程修了
雑誌・広告の撮影制作に従事
2010 スタジオAFROtim設立。商業制作と自主制作を並行
2017 『内外』音楽映像(監督)にて、第2回 Ooh! Macau MV Awards「最優秀クリエイティブMV賞」を受賞
2023 台湾、マレーシア、日本で滞在制作を重ね、新たな題材を探究。作家としての活動を本格化
2026 国際的オンライン写真プラットフォーム1x.comにて「Awarded Photographer」認定
「無意識」「Film!」「日常」シリーズを中心に制作を展開
ポップアップ写真展『 香港の日常』(香港地/札幌)
個展『そこまで、ここから』(札幌市資料館/札幌)
個展『4/7 無意識』を開催(CAFE ESQUISSE/札幌)
Instagram
https://www.instagram.com/toddewajp/
Linktree
https://linktr.ee/timmy_art