その雄渾な姿、
生きる歓喜にレンズを向ける。
遺作展に寄せて
カフェエスキスにて過去に3回の写真展を開催した長南寿志さんが、昨年の9月に急逝しました。虚血性心疾患による突然死でした。享年64、早すぎる旅立ちです。
彼は他に東京のコダックフォトギャラリーでも、大きな作品展を行なっています。いずれも被写体は、最も気に入って撮り続けていた巨樹と、それを取り巻く自然です。そしていつしか彼に懐いた野生のカラス、カーコでした。
残されたパソコンと5台のハードディスクには、およそ4000カットの画像が収められていました。おそらくその何倍ものカット数の中から選び出し、保存したものでしょう。撮りっぱなしの元画像が詰め込まれたフォルダ、テーマごとにきちんと仕分けされたフォルダ、様々な被写体がランダムに放り込まれたフォルダ、そして一枚ずつ丁寧にレタッチを施していた途中らしきフォルダ等々。いくつものディスクにコピーされているものは、特にお気に入り画像のようです。次の発表の機会に備えていたのかもしれません。
今回の遺作展は過去に発表したパネルの再展示です。元画像のメタデータで撮影日時は判明しますが、どこで・どのような状況で撮影されたかなどは、今となっては知る由もありません。しかしそれらの具体情報は元々、生前の写真展でも一切示されていませんでした。彼の作品にとっては必要がないのでしょう。この作品群はいわゆる植物写真や自然科学写真ではなく、彼の『心象風景』だと思うのです。
ご覧の通り、発表する写真はほとんどが、カラーからモノクロに変換されています。光の濃淡だけで描き出される抽象化した写真。色彩情報を破棄する代わりに、撮影者の感情や想いが、メタデータのように埋め込まれている気がしてなりません。
長南寿志さんが何を感じ、何を表現しようとしていたのか。
今回の展示から読み取っていただけると幸いです。
《友人代表》カメラマン 林 直光
[企画]カフェ エスキス
[協力] 林 直光・長南 信孝
※作品販売は募金制とし、ご遺族の方へお花代として寄付させて頂きます(一部運営費に補充)
会期
前編:令和5年1月27日(金) 〜 2月6日(月)
後編:令和5年2月9日(木) 〜 2月20日(月)
長南 寿志 (Hisashi Osanami)
1958年、夕張市生まれ
巨樹の生命力に感銘を受け、30代半ば頃から撮影を続ける
2005年5月 | 個展「存在感」 銀座コダックフォトギャラリー/東京 |
2007年12月 | 個展「生命力」 カフェ エスキス/札幌 |
2009年12月 | 個展「生命力」 カフェ エスキス/札幌 |
2011年11月 | 個展「カラスのカーコ」 カフェ エスキス/札幌 |
2022年9月 | 永眠 |