Instagram @kohnonahoko
開催にあたって
この度カフェエスキスでは2年ぶり3回目の個展を開催します。
ギャラリーや美術館とは異なるカフェの空間では、作品を遠くで見ざるを得ないタイミングが生じます。その生じた距離感を含めて作品(単体として/空間として)にしたいというのが今回の展覧会の出発点でした。近くで見る場合においての作品の「個」として作品のあり方、遠くで見る場合においての「群」としての作品のあり方。また「群」を構成する「個」としての作品としてのあり方、あるいは「個」がかたまった「群」としてのあり方を模索しました。昨年は特に様々な空間での展示機会をいただき、より作品と空間の相互関係に関心を持って展覧会に臨んでいたこともあり、その試みを引き継いだ展示とも言えるかもしれません。
また題について少し触れると、「えんきん」と「おちこち」とでは使っている時代と意味合いに若干の差があります。今は距離感を示すのに使われることが多いですが、昔は現在と将来という時間差においても使われていました(※1)(※2)。「おちこち(をちこち)」については万葉集にもこの言葉が使われている歌が残されています。言語が曖昧で不確定なものであるのと似たように、アートも定義が曖昧なものと感じることがあります。作品そのものではなく、作品を取り巻く環境や時代、また鑑賞者(あるいは鑑賞者自身の変化)によっても役割が徐々に変化してきたと考えています。現在における芸術の役割とは何か。それについては自分の中でまだ明確になっていませんが、その課題について制作を通して試行錯誤しながら追求していきたいと思っています。
さまざまな遠近から作品を楽しんでいただけると幸いです。
河野菜穂子
(※1)えん−きん【遠近】 遠いことと近いこと。〈集英社 国語辞典 第3版
(※2)をち−こち【遠近・彼方此方】 ①遠くと近くと。あちこち。②将来と現在と。〈岩波古語辞典 補訂版〉
河野菜穂子/Kohno Nahoko
油彩を始めた当初は山や街並みなど具体的なものを描いていたが、ある日パレットの非作為的な絵具そのものから、海や山など大自然を目前にしたときに近いものを感じた。それは油彩絵具という物質そのものから生命性や有機性を感じる体験だった。それ以降、絵具そのものからどういう体感を受けるのか、また絵具の性質によって生まれる微妙な差異(マチエールや、色彩)をどのように受け止めるのか、それらを実験的に検証しつつ作品制作を行なっている。それらの作業を通して芸術が人間にとってどのような役割を担うのか模索している。現在、北海道を拠点に制作活動を行う。
主な展覧会
個展
2020/01 | kohno nahoko solo exhibition「広い砂漠をゆく/脱皮した心臓の拍動/櫂を選る」 CAFE ESQUISSE(札幌) |
2022/05 | kohno nahoko solo exhibition「繭に眠る/月をならべる」 CAFE ESQUISSE(札幌) |
2022/09 | kohno nahoko solo exhibition「AM4:00の標本」 The Artcomplex Center of Tokyo(東京/新宿) |
2023/05 | kohno nahoko solo exhibition「どこからきたのか どこへむかうのか」 ギャラリー犬養(札幌) |
グループ展
2019/10 | 「CONTEMPORARY PAINTING EXHIBITION」 The Bricklane gallery (London) |
2020/03 | 「LIKE THIS AND LIKE THAT」 rossocinabro Art Galery (Roma) |
2023/07 | 「いい芽ふくら芽 in SAPPORO 」 大丸札幌店7階 催事場(札幌) |
2023/11 | 「KENZAN2023」 東京芸術劇場(東京/池袋) |
2023/12 | 「未完の大器 vol.9」 Gallery ESSE(札幌) |
2024/01 | 「語る抽象画展16」 The Artcomplex Center of Tokyo(東京/新宿) ※2021年開催「語る抽象画展12前半」より参加 |
2024/02 | 「真冬のシンフォニー2024」 中和ギャラリー(東京/日本橋) |
展示販売会
2024/01 | kohno nahoko exhibition「◯」 Ephraim(札幌) |
2024/03 | kohno nahoko exhibition「靄をたばねて」 大丸札幌店7階 ライフスタイル雑貨売場(札幌) |