「そんなに呼吸しづらいっていうのなら、一思いに深く深くみなそこまで落ちていこう」
展覧会によせて
この度は、カフェ・エスキスにて藤谷康晴個展SIN-KAI「深海 新海 森海 神海」を開催する運びとなりました。私たちにとってはまだまだ未知の暗黒空間である深い海の底を泳ぐ有機体たちの姿がそこには描かれています。そこは、コロナ禍を含め混迷の現代社会を生きる私たちが深く内証的に入り込んでいくための、一人ひとりが持つ心の奥底の世界・海の底です。
私たちは生活や日常や社会の中にいて、生き方に対する明確な答えも持ち得ず、常に不安を抱え生きています。その不安とは例えばコロナのような未知の生命体との遭遇が人々に与える不安であり、属している社会の通念・常識・規則がもたらす自分自身と他者との軋轢であったりもします。誰もが、内省的になり自らの本心を問う日々を送っているのではないでしょうか。周りに気を取られ振り回され精神が消耗する暮らしの中で、一度自分自身の心の奥深くへと沈みこんでいく事で少しでも不安や迷い、憔悴した精神が浄化されるのであれば、今こそ人それぞれの深海へと落ちていく時なのではないでしょうか。そこは深海のように真っ暗なのかもしれませんが、そのさらに奥へと探求したならば、きっとそこには新しい領域があり、そのさらに奥には鬱蒼とした森の海が広がり、その森を分け入った先にあなたの信じる世界・神海があるのかもしれない。
深い深い闇に入り込んで初めて光の存在を感じるものです。今私たちに必要なものは、社会の共通課題を共有する事もそうですが、一人ひとりのマントルへと潜り込んでいき個人のコアを見つめ直す事なのではないでしょうか。混迷を極める現代の社会の中で、皆さんの中に一つの確かな拠り所を突き止める一助になる事を願いこのSIN-KAI展を開催いたします。
藤谷康晴(Yasuharu Fujiwa)
1981年3月11日生まれ。札幌出身・在住。DRAWINGMAN。
細密な線と独創的なイメージでドローイング作品を発表。ペンや筆、マーカーペンを使い、有機的な生き物や、気配が描かれた風景、大首絵などを描く。様式化されないユニークで繊細な線の集積が、時には未知の生き物として時にはアバンギャルドな人物として、はたまた気配だけが描かれた風景として、多様な存在を出現させる。小さな作品から壁画に至るまで、未知の者との遭遇を体験するような「存在との対峙」をテーマに制作している。
主な個展
2021年 | 「SIN-KAI:深海 新海 森海 神海」@カフェエスキス 札幌 「細密 異界 没入 交信」@アートスペース201 札幌 |
2020年 | 「ヨルヒラクヘッズ」@Bar&Gallery卍 札幌 |
2019年 | 「レジデントソウルズ」@アートスペース201 札幌 |
2018年 | 「グリッドヒューマン」@クラウズアートコーヒー 東京 「多様性の中のスタンドプレーヤーたち」@ワールドラウンジコーアンドコー 札幌 |
2017年 | 「ドローイング一族・現代の歌舞伎者たち」@クロスホテル 札幌 |
2015年 | 「CONCRETE FICTION」@札幌市資料館 札幌 |
2012年 | 「原子の咆哮」@アートスペース亜蛮人 大阪 |
2011年 | 「CITY NECROMANCER」@同時代ギャラリー 京都 |
2010年 | 「超空間-full contact」@AD&Aギャラリー 大阪 |
2008年 | 「ウルトラサイレンス」@ほくせんギャラリーivory 札幌 「白昼の神隠し」@ギャラリー門馬annex 札幌 |
2007年 | 「路上でお茶を」@カフェエスキス 札幌 |
2006年 | 「常温で狂乱」@テンポラリースペース 札幌 |
主なグループ展
2021年 | 「ペン画の世界展~第VIII画~」@AAA Gallery 横浜 |
2016年 | 「Our Art Working2016」@アップタウンアーツセンター シカゴ |
2009年 | 「Water」@スペースギャラリー サンフランシスコ |
2008年 | 「札幌美術展2008-美術で綴る札幌の歩み」@札幌市民ギャラリー 札幌 |
その他
2020年 壁画制作@Tentoten Sapporo Station 札幌
Twitter @YasuharuD
YASUHARU FUJIYA/DRAWINGMAN official web site www.f-y-drawing.com