徐々に運動神経が失われていく難病“脊髄小脳変性症“で、2020年に39歳の若さでその生涯を閉じた衣斐大輔さん。体が少しでも動く限り、音楽活動、美術制作、執筆活動など自己表現を続け、沢山の生きた証を残されました。本展覧会では、衣斐さんが特に生きる喜びを実感し創作し続けた、貼り絵・コラージュ作品を展示させて頂きます。
展覧会開催にあたって
「役に立てる喜び」
治療法のない病気は心も病みます。
息子の心の支えは曲や貼り絵作り。
貼り絵を見た方から勇気づけられたと長文メールが届いた時、
「俺の絵が人の力になれる」と、
生きる喜びを実感しながら創作していたようです。
衣斐美稚子
はじめまして、イビダイスケと申します。
僕は永らく音楽を主体に活動していました。この貼り絵も元はと言えばCDのジャケット用に作ったのが始まりでした。初めの頃はコラージュ作品を創っていたのですが、その写真を色や模様となるまで細分化し、それを再構築すればより表現の幅が広がるのではないか?と思ったのが、作品に至った経緯です。
音楽同様、他人は抽象画には目を留めないという擦り込みがあります。ですが具象画のように目に映るものをそのまま描いたところで、それは僕にとって美術ではないのです。目に映るものをそのまま描くなら、目で見て視神経を通して感じているものの方が、よっぽどリアルですし美しいと思うからです。そこで僕は具象の中に抽象を取り込むという手法で、自分で美術を遂行していこうと思いました。「抽象を内包した具象」それがこれらの作品のテーマです。音楽より貼り絵の方が言葉に違わない作品になっていると思います。
“LIFE & WORKS”というタイトルは「暮らしと仕事」という意味でつけました。これは仕事ではありません。でもこれを続けることはいつか仕事に役立つと信じてやっています。「暮らしが仕事、仕事が暮らし」と言った河井寛次郎のように…とまで、高い「暮らしと仕事」のシンクロ率は望みませんが、少しでも暮らしと仕事が重なるように今後も活動していく所存でございます。
初個展開催時の挨拶文より一部抜粋
衣斐 大輔(Daisuke Ibi)
美術作家・音楽作家・言語聴覚士 / 苫小牧出身。10歳代より音楽に夢中になり、高校を中退し、苫小牧から札幌へ移住。音楽の道を志しながら、アート制作にも取り組む。20歳代前半頃からは小説を執筆。32歳の時に、“脊髄小脳変性症“と診断される。2020年39歳、永眠。
略歴
1981年 | 北海道苫小牧市生まれ |
1997年 | 高校中退後、札幌に移住 |
2000年 | 中古レコード店「Be倶楽部」にてフリーター生活送る |
2006年 | 日本福祉リハビリテーション学院 言語聴覚学科 入学 |
2010年 | 国家資格取得・卒業 |
2011年 | 新宿眼科画廊「Art&photo Book Exhibition」参加 /東京 |
2012年 | 新宿眼科画廊「Unknown Possibility」参加 /東京 OYOYO「イラスト展」参加 /札幌 さっぽろ珈琲館本店 個展 /札幌 |
2013年 | 北大病院にて“脊髄小脳変性症“と病名確定 沖縄料理の店 Kupu Kupu Cafe 個展 /苫小牧 |
2014年 | 札幌資料館ギャラリー 個展 /札幌 |
2015年 | 詩とパンと珈琲 Mon Coeur 個展 /札幌 |
2016年 | ライブハウス エルキューブ ライブ(ノイズ) /苫小牧 |
2017年 | Tテラス槻 個展/苫小牧 ライブハウス エルキューブ ライブ(ノイズ) /苫小牧 |
2020年 | 病名確定から7年 39歳で亡くなる |
2021年 | 小説「雲をとおる波」自費出版 |
2021年 | カフェサマルカンド(サンガーデン内)遺作展 /苫小牧 |
2023年 | カフェダンデライオン 遺作展 /苫小牧 Tテラス槻 追悼二胡演奏・朗読ライブ /苫小牧 |