源泉が湧き出る匂いとともに、
記憶の場所へ、
年月を超えて近づき
表現してみたい。
展覧会に寄せて
幼年期、祖父母のすむ定山渓の上流にあった豊林荘(旧営林署保養所)で多くの時間を過ごした。
それは、豊平川が大きく蛇行する崖の上に立ち、豊富な源泉が湧き出ていた。
背後に深い森が迫り、水が豊富なその地には、イタドリなどの自生の植物が生い繁り、たくさんの虫たちがいた。アゲハチョウが連なり飛んでいたと思うと、水辺にオニヤンマの羽音がうるさいほどに群れをなし、温泉の夜の窓には水色のオオミズアオが標本のように翅を広げて休んでいた。
テニスコート脇の水路にカエルの卵がオタマジャクシになるのを待っていた。
川辺に下ると、どうしてはこばれてきたのか巨岩がごろごろ、綺麗な石はないか、水をかけて色を探したりした。
豊平峡ダムのできる以前の豊平川の水量は豊富で、吸い込まれる様な深さの淵があった。
幼児の私は多くの時間、豊林荘の周りで興味のあるものを一日中観察して過ごした。
その土地で感じたことは、それから半世紀以上の年月がたった今、自分の生命力の源にあるものと感じ、今回は森、水、生まれる植物、蝶などを描いてみたいと思った。
瀬川葉子
※ 会期中、詩画集『透明書簡』(絵・瀬川葉子、詩・糸田ともよ / A5サイズ)刊行予定
詩画集『透明書簡』
糸田ともよさんが遠く静岡県に転居したのを機会に、絵と詩の往復書簡をしてお互いの距離を近くに感じようと始めました。約6年間続けたものを、今回詩画集にまとめました。
瀬川 葉子(Yoko Segawa)
1955年札幌市生まれ札幌市在住
子どもの頃、父親の転勤で紋別、釧路、広尾などに住む
北海道教育大学札幌分校特設美術課程卒業
個展
2019 | 「償い」(ギャラリーミヤシタ / 札幌) |
2015 | 「一瞬の響き」(カフェエスキス / 札幌) |
2015 | 「FILE」(テンポラリースペース / 札幌) |
2013 | 「FILE」(ギャラリー門馬ANNEX / 札幌) |
2012 | 「一瞬の響き」(カフェエスキス / 札幌) |
2010 | 「記憶に沈んだ庭」(コンチネンタルギャラリー / 札幌) |
グループ展
2023 | 「びょういんあーとぷろじぇくと展」(SCARTSスタジオ1・2 / 札幌) |
2022 | 「ゆらぎ と とき展」(ギャラリーレタラ / 札幌) |
2020 | 「ゆらぎ と とき展」(ギャラリーレタラ / 札幌) |
2018 | 「いのちのかたち…かもしれない展」(ギャラリーエッセ / 札幌) |
2017 | 「いのちのかたち…かもしれない展」 (ギャラリーエッセ / 札幌) |
2015 | EAU/H〈ギャラリーレタラ野外彫刻展〉(ギャラリーレタラ/ 札幌) |
2014 | 「瀬川葉子・高橋佳乃子」作品展(ギャラリーレタラ / 札幌) 「4つのdays」 (ギャラリー門馬 / 札幌) |
2011 | 「瀬川葉子・高橋靖子」2人展(ギャラリーエッセ / 札幌) |