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Vol. 274

藤谷康晴展「細胞群の叛乱」

YASUHARU FUJIYA EXHIBITION “SAIBOUGUN no HANRAN”

2023.6.15 ─

2023.7.10

そもそもが異形なのだ
彼ら細胞に自分の意思は届かない。近くて遠く、所有という実感も沸かない。なんというか、ウイルスや細胞たちの営みこそが、この地球上で連綿と行われてきた歴史の主役のような気がしてならない。自分の日常動作の端々で、細胞とウイルスの営みが展開されている。その皮膚の内側の日常は、皮膚の外側で維持している生活の平穏たるありさまに頓着する事はない。時として、外側の日常に歪が生じ、内側の日常が顔を出す。そして把握していない日常を突き付けられるのである。私という体が社会の中で日々動いているのではなくて、細胞たちが時にはウイルスたちと交わりながら常に動いているのではないだろうか。

展覧会に寄せて

以前に描いたCELLという作品シリーズが、エスキスの青い壁に浮かび上がる状態を、ふと、頭に思い描いた。その眺めがいいなと思った。それでこの作品シリーズを基本にして展示構想を練り始めた。CELLシリーズは12、3年程前に制作した絵で、ちょうど東日本大震災があった時期と重なっている。震災の年に2回個展をし、2回目の時に初めてこの作品シリーズを出している。あの頃、自分の作品を個展で披露しながら、震災の影響などというものはまったく作品に反映されていないのだと、自分自身にだけ打ち明けていた事が、思い起こされる。この作品シリーズに限らず、そもそもが異形なのだ。

CELLシリーズ以外は新作にしよう、そう決めて取り掛かると、新作は多かれ少なかれこのシリーズの影響を受けて出来上がっていった。そうやって個展の空間構想が少しずつ形を成していった。その過程で、どうして細胞ではなくCELLと名付けたのか、なぜCELLなのかと考えを巡らしたのだが、結局答えは出ていない。しかし細胞という言葉には強く惹かれていた。それは、自分の思考の中で、コロナウイルスの出現が細胞という者の存在に光を当てた事が大きい。今回は当事者である。どうもウイルスが自分の細胞の中で何事かをしているらしい。彼ら細胞に自分の意思は届かない。近くて遠く、所有という実感も沸かない。なんというか、ウイルスや細胞たちの営みこそが、この地球上で連綿と行われてきた歴史の主役のような気がしてならない。自分の日常動作の端々で、細胞とウイルスの営みが展開されている。その皮膚の内側の日常は、皮膚の外側で維持している生活の平穏たるありさまに頓着する事はない。時として、外側の日常に歪が生じ、内側の日常が顔を出す。そして把握していない日常を突き付けられるのである。私という体が社会の中で日々動いているのではなくて、細胞たちが時にはウイルスたちと交わりながら常に動いているのではないだろうか。

今年の2月に京都で行われたダンサー・田中泯の公演を見た時、あぁ、この人の踊りは細胞が踊っているのだなと思った。それはまさに把握していない日常の現われのようであった。それで、肉体の中で細胞群が叛乱しているのだと納得した。うん、今度の個展のタイトルはこれしかないなと思った。

藤谷康晴

藤谷康晴(Yasuharu Fujiya)

1981年3月11日生まれ。北海道在住。ハイパードローイングという技法を用いて、「異形の存在」をテーマに、ドローイング作品を制作している。ハイパードローイングとは過剰な線描と色彩で描くことである。常識では言い表せないものや名前を持たぬ存在に興味を抱き、彼らのようなズレた存在にこそ、新しい考え方や価値観が宿っていると考える。例えば、「光の子」シリーズは、未知の生物をイメージして描かれた者たちである。ハイパー大首絵シリーズは、江戸の浮世絵版画フォーマットからズレて、直描きによる過剰な線描と色彩で描き変えられた別様(蝦夷)の大首絵である。鑑賞者は作品達と向き合うことで、異形の者の「存在感」と対峙することになる。北海道という局地でずっと制作してきたことも、このような過剰な異形者達を生み出す要因になっていると考える。

個展

2021 「SIN-KAI 深海・新海・森海・神海」@カフェエスキス 札幌
2020 「ヨルヒラクヘッズ」@Bar&Gallery卍 札幌
2019 「レジデントソウルズ」@アートスペース201 札幌
2018 「グリッドヒューマン」@クラウズアートコーヒー 東京
「多様性の中のスタンドプレイヤーたち」@ワールドラウンジコーアンドコー 札幌
2017 「ドローイング一族・現代の歌舞伎者たち」@クロスホテル 札幌
「ブロックチェーンのまものたち」@Bar&Gallery卍 札幌
2015 「CONCRETE FICTION」@札幌市資料館 札幌
2012 「原子の咆哮」@アートスペース亜蛮人 大阪
2011 「覚醒庵-ドローイング伽藍-」@テンポラリースペース 札幌
「CTIY NECROMANCER」@同時代ギャラリー 京都
2010「超空間-full contact-」@AD&Aギャラリー 大阪
2008「白昼の神隠し」@ギャラリー門馬annex 札幌
2006 「常温で狂乱」@テンポラリースペース 札幌

グループ展・その他

2022 ハイパードローイングパフォーマンス「怪物たちのたそがれ」@チカホ 札幌
2020 壁画制作@TenToTen Sapporo外壁 札幌 (2022年消滅)
2016 「Our Art Working2016」@アップタウンアーツセンタ- シカゴ
2009 「水-water-」@スペースギャラリー サンフランシスコ

藤谷康晴ハイパードローイング https://www.f-y-drawing.com

聚落(部分)
CELL
ARCHIVE

店内の壁面や棚は貸しギャラリーとなっております。絵画、写真、彫刻、版画などジャンルを問わず、3~4週間の会期で展覧会を行っています。アート作品を見ながら楽しんで頂ければなによりです。展覧会の申し込みも随時受け付けておりますので、お問合せ下さい。

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